シミの種類
老人性色素斑
シミのなかで最も多いのが、老人性色素斑です。
老人性色素斑は、紫外線などにより肌が強いダメージを受けてメラニン色素が過剰に生成されることで起こります。顔や手の甲、腕など日光にあたりやすい部位に多くみられます。
皮膚の表面(表皮)に近いところに色素過剰が起きており、この治療では、患部にQスイッチYAGレーザーを照射してメラニン色素を分解し、改善していきます。
通常、1-2回の照射を行うことで改善します。レーザー治療後には、1-2週間の軟膏塗布とテープ処置が必要ですので、しばらくのタウンタイムがあります。
お顔に多数のシミがある場合やレーザー照射によるダウンタイムを避けたい場合は、まずお顔全体に光治療(I2PL)を行い、少しずつシミを薄くしていくこともできます。
肝斑
肝斑は、30-40代の女性に多く、両方の頬の高い位置(頬骨のあたり)から目尻にかけて、左右対称に出現することが多いです。
肝斑の起こる原因は明らかではありませんが、悪化する要因はいくつか知られています。紫外線や女性ホルモン、まさつ刺激などによって、肝斑の色調は濃くなります。
肝斑治療では、レーザートーニング「だけ」を行うのではなく、保存的療法とレーザートーニングを「併用」することが望ましいです※1。保存的治療法とは、具体的には次のとおりです。
- 病変部をできるだけこすらないようにする。
- トラネキサム酸およびビタミンCの内服を行う。
- 紫外線対策を徹底して行う。
- ふだんのホームケアでもビタミンCやトラネキサム酸を含む製品を継続して使用する。
- トレチノイン製剤・ハイドロキノン製剤の外用を併用する※2。
- ビタミンCを含む製剤を用いたイオン導入を行う※3。
これらの保存的治療に加えて、レーザートーニングを行っています。
ただし、肝斑の患者さんでは炎症後の色素沈着を誘発しやすいことが知られています※4。
トレチノイン製剤のように皮膚炎を伴う治療やレーザートーニングを行うことで、炎症が誘発され、肝斑がかえって濃くなり周囲の皮膚との色調の差が目立つといった合併症(副作用)が起こる場合があります※5。
また、肝斑の存在する部位に、他のタイプの色素斑が混在している場合も多いです。したがって、当院では肝斑の治療の際に、診療経験の豊富な医師がきちんと病変部を診断して、レーザートーニングや併用する治療法を慎重に決定しています。
また、上述の方法を組み合わせて、できるだけ炎症を起こさないよう注意深く治療を行う必要があります。肝斑治療では、これらの専門的な治療とともに、ご自身でも肝斑を改善するための取り組みを行っていただくことで治療の効率が上がります。
大切なことは、ご自身のスキンケア習慣の見直しと生活習慣のなかで肝斑ができてしまう要因となりうる行動を取り除くことです※6。
※1-6までの記載内容は、日本形成外科学会診療ガイドライン 皮膚疾患 第Ⅱ編
母斑・色素性疾患(レーザー治療)金原出版(2015年)の内容に基づいています。
ADM
ADM(後天性真皮メラノサイトーシス、後天性両側性太田母斑様色素斑、遅発性太田母斑様色素斑)は、いわゆるシミ(老人性色素斑)と見た目が似ている色素性病変です。
ADM(後天性真皮メラノサイトーシス)は、頬を中心に斑点のような病変が左右対称に存在しています。その多くは20歳頃より目立ってくる傾向があり、色調が灰色〜褐色に見えることが多く、大きさはさまざまです。
皮膚の内部(真皮)に存在する未分化なメラノサイトが紫外線やまさつなどの刺激を受けて、メラニンをつくり出すことでADMになると考えられています。
老人性色素斑よりも深部にメラニンが存在しており、Qスイッチレーザーで色素を破壊します。
通常は3回以上の照射を行います。
レーザー治療後には、1-2週間の軟膏塗布とテープ処置が必要ですので、しばらくのタウンタイムがあります。